不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

「プライベートまで、お前のどうでもいい話を聞かないといけないのか?ウンザリなんだよ。いい加減気づいたら?纏わりつかれて迷惑なんだよ。後、お前に下の名前呼ばれると吐き気がする、2度と呼ぶなよ」

普段の穏和な主任とは、別人かと思うような毒の吐き方に、飯島さんという女性は、顔を真っ赤にさせ、わなわなと肩を震わせた後、飲んでいたグラスを手にして、主任目掛けてかけようとした。

危機一髪、カウンターの男性が、グラスを取り上げ、主任は、濡れることを回避したのだが…

「お客様、店内でのトラブルは、ご遠慮願います。当店への出入りは禁止させていただきましょうか?」

主任へ向けて、丁寧に言葉を浴びせた男性の笑顔が、とても恐ろしく感じた。

怒りのぶつけどこを失った女性は、お金を荒っぽくカウンターに置くと、「そんな人だとは思わなかったわ」と捨てゼリフと共に、私をぎろっと睨んで出ていった。

「まったく…もう少しうまくやれよ」

「我慢の限界だったんだよ」

「で、どうする?帰るの?飲み直す?」

「帰りますよ」

「帰るのかよ。彼女、紹介してくれないの?はぁ…勝手にするし…初めまして、白髪の爺さんの息子です。香恋ちゃんだよね⁈」
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