不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
聞こえないふりをした主任を押し避けて、私の前に立つ男性。
「…はい、初めまして。マスターの息子さんですか?」
「そう。今日は、当番変わって正解だったわ。香恋ちゃんに会えるなんて、ラッキーだ。さっきは、親父から聞いてた通りの子がいるから、もしかしたらって思ったんだよね」
「そうだったんですね。私も、息子さんなのかなぁと思ってたんです。今日は、交代されたんですか?」
「そう、突然、お袋と映画見に行くとかで交代。あっ、そういえば、香恋ちゃん、お袋の作るケーキ好きなんだよね⁈うちの息子の嫁になったら、毎日、食べ放題だよ。俺の息子、そんな奴より、いい男なの保証するし、乗り換えない?」
「なに、勝手に名前呼んでんだ⁈嫁にならねーし、乗り換えなんてさせるかよ。てか、親子揃って同じこと言わせるな」
『なんで、今日は、新さんがいるんだよ』小さくぼやいていた。
私はと言うと、新さんと主任の会話の中に、彼の気持ちが垣間見えたようで喜んでいた。
「もう、帰るぞ」
「はい。…ごちそうさまでした」
「うん、またね」
新さんへお礼を言うと、主任は、もう一度、私の手を握り直すので、出る際、優香の方を見た。