不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「よそ見なんてしてないよ。俺には、香恋だけだって知ってるだろう」

空いていた反対の手で、私の頬を撫でて可愛がる素振りを披露する。

主任の隣に座る女性は、無視されている状況に綺麗な顔を険しくさせ、私を睨みはじめていた。

「香恋こそ、俺を待たせて何してたんだ?」

「待ってたんですか?」

「グラス二杯分ぐらい待ったな」

「ごめんなさい。あっちの席で優香と飲んでたの」

主任は、私がいることを知っていたのかと謝ったのだが、話がずれている気がしてならない。

「もう、いいのか?」

「うん。斗真さんが来るみたいだし」

「じゃあ、一緒に帰ろう」

当然、無視され続けた隣の女性は怖い顔です。

「いいの?」

女性を残して私と帰っていいのだろうか‥

主任は、今気がついたとばかりにわざとらしく振る舞う。

「飯島さん、彼女が来たので俺は帰ります。新さん、チェックお願いします」

スッと出したカードで清算し、「じゃあ、お先です」と私の手を取り、恋人繋ぎをすると出口へ歩き出した。

「ちょっと、聖也くん…私の相談は聞いてくれないの?」

はぁーと大きなため息を吐いた主任は、「ちょっと、待ってて」と手を離し、彼女の前へ。
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