不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
相変わらずのブカブカで、丈は、短いワンピースのようだ。
「抱っこしてこうか?」
「…大丈夫です」
抱き潰した罪悪感からの好意なのだろうが、全力で断った。
今の私の心の平穏を取り戻す為にも、余計な接触はするべきではないと思ったのだ。
リビングから1人で浴室へ。
ドラム式洗濯乾燥機が回っている。ということは、私の下着まで彼のものと一緒に洗濯されたのだろう。
服が乾くまでの残り時間も、計算されたかのように、数十分。
洗濯機の上には、バスタオルと拭き取り用のメイク落としシートも準備してある。
相変わらず気がきく。
毎回、モヤっとしながら使っていたメイク落としシートは最後の一枚で、たっぷりと液体が染み込んだシートで、遠慮なくメイクを拭き取った。
誰かが持ち込んだ物なのだろうが、ほんと、こういう気遣いが気に入らない。
それを使っている自分も、どうかと思うけど、必要なので、遠慮なく使わせてもらっている。
全身を洗った後の入浴タイム。
彼のシャンプーとトリートメントを使わせてもらった後は、毎回、濡れた髪の匂いを嗅ぐ癖ができてるせいか、つい、毛先を鼻先へ運び匂いを堪能する。
膨らんでいた複雑な気持ちは、同じ香りを纏える嬉しさに負け、萎んでいく。