不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

最悪だ…と、思いながらカウンターに席を取り、話を聞くことに。

案の定、俺の読みは確かで、従業員との溝、うんぬんの話を飛ばし、大まかに言えば、誰も自分の悩みをわかってくれないとか、俺の気配りは飯島の為の行動だろうとか、自分には、俺のような男に側にいてほしいとか…延々と耳障りな言葉に、何かと体を密着させてくる。

これっぽっちも、気もないし、心動かされることもない。

目の前のマスターの息子、新さんは、完全に面白がっている。

後で、面白く揶揄ってくるのだろう。

ビール2杯目にして、限界がきていた。

そこへ、

「聖也さん、その方誰ですか?」

声に振り向くと、香恋がいた。

カウンターから、店内に入ってくる客は見えるので、俺が店に入る前からいたのだろう。

なんだか思い詰めた表情で、俺を見ている。
隣の女に、不安になり声をかけてきたのだろうか?

「私がいるのに…よそ見しちゃ嫌です」

これは、嫉妬してくれているのか?

嫉妬なら、嬉しいとはじめて思う。

何も言わない俺に、泣きそうな顔をして頑張っている香恋が目に入り、愛おしさのあまり、膝の上にのせた。

「よそ見なんてしてないよ。俺には、香恋だけだって知ってるだろう」
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