不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
あー、なるほど。
落ちない女を落とすまでが、こいつの目的だったのだと直感。
そして、負けを認めたように、出ていった。
まぁ、この俺に勝とうなんて、思う奴もなかなかいないだろう。
これで、ヤツもわざと再提出などしてこないはずだ。
3時から10分の小休憩に席を立つと、後から、高木がついてくる。
「主任、どこ行くんですか?自販機はあっちですよ」
公私をわけ、ちゃんと呼び方を変えてくる高木は、いつもなら、気にも止めない俺の行動にニヤついている。
「ちょっと、野暮用だからついてくるな」
「ふーん。この間のお礼に缶コーヒーでも奢ってもらおうと思ってたのにな」
そういえば…と、胸ポケットから財布を取り出し5000円札を高木に渡した。
「これで、彼女に何か買ってやってくれ」
「あざーす」
るんるんと音が聞こえるような足取りで戻っていく。
高木を追い払い保管庫へ向かった。
[休憩時間、一人で保管庫にきて]と、香恋へ付箋を貼り書類を渡したからだ。
だが、戻ったはずの高木に見られているとは知らずに、香恋が来るのを待った。
カツンカツンと歩く音だけで、香恋の足音だとわかるほど、彼女に溺れているらしい。
ドアの前に立ち、開けた瞬間、待てずに中に
引き込んだ。
ぎゅっと抱きしめて、唇目掛けてキスをする。
唇ごと強く吸いつく。
苦しいらしく肩を何度も叩いているが、お仕置きなのだから、我慢しような。
なんのお仕置きかって…
俺以外の男に愛想よくしてるし、俺を不安にさせたからだ。
香恋の気持ちはわかっている。
ただのヤキモチなのだ…。
こんなふうに感情を動かされるほど、俺を虜にした香恋が悪い。
「どうしたんですか?痛いです」
「わざとだからな」
「ひどい」
「ひどいのは、香恋だろ。俺がいるのに、他の男の気をひく香恋が悪い」