不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

離れがたくて、補充とか訳の分からないことを言って、抱きしめる。

このまま、抱きしめていたい。

あんな、性悪女の巣窟になんて「行きたくねー」と、本音がポロリ。

俺らしくなく、香恋を前にすると気が緩んでしまうらしい。

打算もなく、心から「頑張ってきてくださいね」と抱きしめてくるのだ。

こういうとこだよ…俺をダメにする。

自分から連絡先を交換してと頼むとか、ありえない事態だ。

スマホに香恋の連絡先があることに、頬が緩み、頑張るかと、作業を続けたのだった。

翌日から、想像通りの事態に陥り、社内で香恋と会うこともなく、精神的に疲労が増すばかり。問題の女のせいで雑用に振り回されて、帰宅時間が遅くなるし、ストレスで寝付けない。

たった数日で、ストレスが溜まり限界だった俺は、行きつけの店へ。

店に入るなり、何人かの女に声をかけられる。前の俺なら、そのまま部屋へ連れ込んで女を抱いていただろう。

だが、もう、香恋じゃない女に、心も体も動かない。

俺は、香恋以外の女の連絡先を削除していく。

そして、スマホ片手に、香恋の連絡先を開いて、閉じてを繰り返す。

週末になれば会えるのに、今は、もう、それだけじゃ足りなく、早く香恋で癒されたいと思いが増すばかりだった。
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