令和最愛授かり婚【元号旦那様シリーズ令和編】
午後から出社した私は、想定通り、息をつく間もないほど仕事に追われた。
ずっしりと重い疲労を肩に感じながら、その日の最後で、編集部のオフィスを出た。


それから、電車に揺られること、三十分。
ひとり暮らしの質素な1Kのマンションに帰り着いたのは、午後十一時半だった。


玄関でパンプスを脱ぎ散らかし、ほとんど転がるように部屋に入り、ベッドに一直線してドサッと倒れ込む。
マットレスが弾む余韻をやり過ごしてから、モゾッと仰向けになって、低い天井を見つめた。


仕事が忙しいって、いい。
とんでもない事態に直面しても、なにも考えずに没頭していられた。


だけど……。
私は今、妊娠八週。
仕事にかまけて、現実逃避していていいわけがない。


意を決して、ベッドから降りた。
バッグから、封筒とスマホを取り出す。
スマホの画面に表示したのは、黒須類の電話番号だ。


午後十一時半という時間を気にして、発信ボタンをタップしようとする指が止まる。
人に電話をするには非常識な時間だけど、そうも言っていられない。
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