令和最愛授かり婚【元号旦那様シリーズ令和編】
黒須類は、私の謝罪の途中で、左手首の時計に目を落とした。


「挨拶もご機嫌伺いも必要ない。三十分しかないから、さっさと本題に入れ」


尊大で傲慢な物言いも、また相変わらず――。
彼とは、仕事で出会った。
こういう不遜な態度をよく知っている私でも、さすがに頬の筋肉がひくっと引き攣るのを感じる。
だけど、この三十分を捻出するのに、仕事を調整してくれたのはわかるから、唇を結んで、テーブルに伏せておいた封筒を彼の方に滑らせた。


「……なんだ? これは」


黒須類は、チラッと封筒に目を遣っただけで眉根を寄せる。
眉間の皺に、警戒心が滲んでいるような気がして、私の緊張が煽られた。


「中を、確認してください」


意識して声の抑揚を殺して促すと、彼は訝しそうに首を傾げ、封筒の中の用紙を摘まみ出した。
そして、ピクッと眉尻を上げる。


「妊娠しました。あなたの子です」


わずかな反応を確認して、私は言われた通り、いきなり本題に入った。
彼は、ほんの一瞬目を瞠った。
でも、軽く顎を撫で、「なるほど」と短く相槌を打つだけ。


私は上目遣いに、その表情の変化を探った。
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