令和最愛授かり婚【元号旦那様シリーズ令和編】
パニックになる私の前で、ゆっくりとカップを持ち上げ、男の人にしては長い睫毛を伏せ、音を立てずに一口啜る。
そして。


「無責任とは、心外だ」


瞳に不機嫌な光を湛え、私を睨み返してくる。
強烈な目力に怯み、私は即座に言い返せない。
彼は口を窄めて、「ふう」と息を吐いた。


「まあ、言いたいことはわかる。俺は、君がひとりで産んで育てると言い出していたら、自分と子供の人生を甘く考える、愚かで浅慮な女と蔑んでいただろう」

「っ、そうでしょ。それなら……」

「だけど俺は、ひとりで産んで育てろ、とは言っていない」


彼がなにを言おうとしているのか読めず、得体の知れない不審感が胸に広がる。


「……なにそれ。お金で解決しようとでも?」


椅子に座り直し、皮肉たっぷりに訊ねると、彼はピクッと眉を動かした。


私が〝黒須類の子供〟を産んで、立派に育てるために必要な養育費。
この人なら、十分な額を支払えることを、私は知っている。


日本のみならず、海外進出も果たしている、国内最大のIT企業グループ『(クロス)・ホールディングス』――。
黒須類が、大学卒業と同時に起業した会社だ。
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