魔王様は攻略中! ~ヒロインに抜擢されましたが、戦闘力と恋愛力は別のようです

「な、なんて美しい……!」

「相手を信頼しているからこそできる打ち合い。一糸乱れぬ剣筋!!」

「私、涙が出てきましたわ……!」

 神官の白いローブと、聖女の黒いドレス。相対する二つの色がふわりと広がる。青紫色の瞳と、赤い瞳。交わる美しい眼差しに浮かぶのは、相手を本気で打ち負かさんとする好戦の色だ。

ぴりりと満ちる緊張感が、見ている者にまで呼吸を忘れさせる。気づけば人々は、手に汗握り叫んでいた。

「いけ! そこだ!」

「メリフェトス様! 頑張って!!」

「私も! 私も加えてください、聖女様!」

 ちなみに、最後のセリフはジーク王子である。

 けれども、キャロライン自身、ジーク王子を咎めることは出来なかった。

(な、なんですの、この感情は……)

 知らないうちに、キャロラインは両手を握り合わせていた。そのことに気付けないほど、キャロラインは聖女と神官、二人の舞に魅了されていた。

(剣舞を通じて築かれる、お二方だけの世界。何者も寄せ付けることを許さない、孤高の世界。だというのに、こんなにも胸を熱くさせるなんて……っ)
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