魔王様は攻略中! ~ヒロインに抜擢されましたが、戦闘力と恋愛力は別のようです

 あの美貌に、あの自信。やることなすこといちいち様になる。とにかく粋で、かっこいい。兵士らなどすっかり心酔してしまって「姐さん! 一生ついてきます!」と敬礼をしていた。

 そんな聖女に、ジーク王子が向ける瞳と言ったら! 普段から麗しく輝いている王子であるが、あんな風に、子供のようにキラキラと目を輝かせているのは初めてみた。

 ジーク王子だけではない。王子の側近たちも聖女を気に入ったらしく、護衛騎士のアランは聖女何かするたびに膝を叩いて爆笑していたし、補佐のルリアンも珍しく自分から聖女に話しかけに行っていた。

 極め付けは、王宮魔術師筆頭の天才、クリス・レイノルドだ。人嫌いで、いつもならパーティの類には出席しないクリスが今夜顔を見せているのは、絶対に聖女が目的だ。その証拠に、先ほどから声をかけたそうにそわそわと周囲をうろついている。

(あ、あら……? もしかして私、結構不利なのでは……?)

 はたと気づいて、キャロラインは顔を青ざめさせた。

 先ほど名をあげた者は、すべてエルノア王国のこれからを担う次世代のホープばかりだ。

 アランは未来の騎士長、ルリアンは未来の宰相。クリスもすでに王宮魔術師の中で揺るぎない地位を得ているし、王太子であるジークは言うまでもない。おまけに、聖剣の預かり手に選ばれた神官メリフェトスは、じき神官長と噂されている。

 この国の要人たちを悉く、あふれんばかりのカリスマ性で虜にしつつある聖女アリギュラ。その影響力はまさしく、王太子妃に申し分ないのでは……。
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