魔王様は攻略中! ~ヒロインに抜擢されましたが、戦闘力と恋愛力は別のようです
(い、いけませんわ、キャロライン!! 弱気になったらそこで戦は終了なのですわ!!)
ぶんぶんと首を振り、キャロラインは自分に喝をいれる。普段以上に気合を入れて侍女に巻いてもらった縦ロールが、勇気を与えてくれる気がした。
(大丈夫。残りわずかですが、パーティが終わるまでにはまだ時間が残されていますわ。その間に、ダーシー家の令嬢としての意地、しかと見せつけてやるのですわ!)
おー!と、物陰なのをいいことに、キャロラインは片手を天井に向けて突き上げる。
――そんな彼女を、後ろから盗み見る影が三つ。その不穏な眼差しに、キャロラインは気づくことができなかった。
「にしししし。うまくいったな。いまのところ、わらわの全勝じゃ」
ところかわって。
光の聖女、もといアーク・ゴルドの魔王アリギュラは、にやにやと勝利の味に酔いしれていた。
赤ワインの入ったグラスを手に、わぁるい笑みを浮かべるアリギュラの姿は、まさに悪魔そのもの。ご機嫌にグラスを揺らす主人に嘆息して、メリフェトスはモノクルの奥から呆れた目を向けた。
「そのあたりで満足されたらどうですか? アリギュラ様ともあろう方が、人間の戯れに付き合うなど。悪役令嬢めの相手をしてやるのも、もう十分でしょう」
だがアリギュラは、「何を言うか!」と黒髪をはらった。
「これは戯れではない。キャロラインが仕掛けてきた、真剣勝負じゃ! あやつが向かってくる限り、この戦に終わりはない。全力で向かってくるならば、全開に迎え撃つまでじゃ」
ぱちくりとメリフェトスが瞬きする。ややあって、彼はあごに手を添え、ふむと頷いた。