義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 先生たちの指示のもとで協力し合いながら、火を起こしたり鉄板やアミを運んだり、あるいは食材を切ったりという準備を進めていく。
 梓たちは食材を切る係に振り分けられた。お肉はパックから直接取って焼けばいいので、主に野菜だ。
「たくさんあるねー。全部切るなんて大変そう」
 食材置き場から山のように積まれた野菜を取りながら楓が言った。これを手分けして適当な大きさに切って、ときには皮をむいたりの処理もして、焼けるように準備していく。
「楓ちゃん、料理は苦手なんだっけ」
 梓はにんじんを取って、包丁などが用意されているところへ持っていくべく、配られたかごに入れて言った。手を動かしながらも尋ねると、楓は頷く。
「うん。家でもあんまりしないし……包丁は手を切っちゃいそうで怖いし」
「そうだね、気を付けないとだよね」
 梓は割合よく料理をするほうだといえた。そして慣れているほうでもある。
 なにしろ今の家族になるまではお母さんと二人暮らしだったので、料理をしてご飯のしたくをすることも多かった。お母さんと二人での食事くらいは作ることができる。
 そして今だって、お母さんや、ときには渉とご飯を作ったりもする。
 でも楓も、もしくはほかの友達もあまり料理には慣れていないようだ。手とか切らないように、注意して見ててあげたほうがいいかな、と思った梓だった。
「しっかり野菜を持って、動かないようにして、包丁も急がず動かせば大丈夫だよ。わからなかったらお手本見せるし」
 梓の申し出に楓はすぐに頷いた。
「じゃあお手本見せて! 梓ちゃんはご飯も作るんでしょ。梓ちゃんに習えばきっとうまくなれるなぁ」
「買いかぶりすぎだよ」
 そんなふうに言ってもらえるのは嬉しかったし、お手本になれたら、と思ったのも確かだったけれど、なんだか照れくさくなってしまう。
 でも楓には、以前、渉が告白されているのを見てしまってショックを受けたとき、大いに助けられている。
 なにごとも助けあいだ。今回は自分が楓の手伝いができたなら。
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