義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 そんなわけで、適当な数を取ってきた野菜を切りはじめた。切るのは当たり前のように包丁だし、皮むきにもピーラーなどはない。包丁の使い方を覚えるようにだろう。
 使う野菜はにんじんのほか、ピーマン、じゃがいも、たまねぎ、キャベツ……。簡単に切れるものから手間のかかるものまでさまざま。
 よって、「楓ちゃんはピーマンをお願い」と梓は緑色のふっくらとしたピーマンを渡した。
 ピーマンは皮むきの必要がない。ふたつに切って、種を取って、それからさらにいくつかに切り分けるだけ。よって、難易度が低いのだ。
 梓が説明した切り方を、楓はそろそろとおこなっていく。ふたつに切るだけでもちょっとびくびくしている様子だった。
「片方をしっかり押さえて切るんだよ。左手は『猫の手』っていう形にしてね……」
 指先を切らないように丸めて押さえる形、通称『猫の手』を伝授する。楓は「わかった!」と梓の手を真似してピーマンを押さえた。とん……とん……と包丁が鳴った。
 梓は一番厄介なじゃがいもを剥きながらそれを見守る。じゃがいもは皮を剥いて、芽があれば取って、そして切り分けなければいけないのでやることが多いのだ。芽があって残ってしまっていたら、中毒を起こすこともあるし。
 周りでも友達たちがわいわいおしゃべりをしながら野菜の処理をしていった。
「ねぇ、梓ちゃん。小鳥遊先輩ってお料理するの?」
 声をかけてきたのは雲雀。当たり前のように、渉の家での様子が気になるのだろう。梓はなんともなしに答えた。
「うん、するよ。それまでお父さんと二人だったから作ることが多かったみたいで、すごくうまいんだ」
「そうなんだ! 勉強もスポーツもできるうえに、お料理までできるなんて完璧だねぇ」
 雲雀はうっとりした様子。それを見て、渉を褒められるのを聞いて、なんだか自分のことのように嬉しくなってしまった。
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