義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 消灯時間前なのでまだ廊下にはあかりがついていた。暗い中を歩いて目的地に向かうのは少し怖いし、苦労してしまっただろう。
 でも梓はじゅうぶん周りを注意しながら、まるで泥棒かなにかのように、そろそろと廊下を進んだ。
 先生に会ったら困ったことになる。当たり前のように部屋に戻されてしまうだろうし、叱られるはず。
 生徒であれば、楓の言った通り『協定』で見逃してもらえるだろうけど。
 渉に会うということより今は、待ち合わせ場所までうまくたどり着けるかということが不安だったし、どきどきしてしまっていた。
 こんな、悪いことをするのは初めてだった。合宿ではよくあると聞いたし、実際にバスの中だって『毎年ある』というようなふうに聞いたけれど、いいことか悪いことか言ったら、100%悪いことである。
 よって、びくびくとしてしまった。
 でも渉だってそうだろう。優等生がこんなこと。
 見つかっておおやけになってしまえば、梓以上に大変なことになってしまうはず。
 しかしその危険をおかしても、なにか梓に用があるようなのだ。それも、ひとに言えないようなもの、だろう。こっそりスマホにメッセージを飛ばしてきたのだ、その可能性はおおいにあった。
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