ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
神谷さんの言葉には、一点の曇りもない。ただ一心に、会社と家族の未来を守ろうとする気持ちであふれていた。
私がお父さんから欲しかったものは、そういう気持ちだったのかもしれない。
「ただ、父には味方でいて欲しかった。どんなことがあっても。.......結局、そこなんです。」
それに、どれだけ卑怯だと思ったところで、受け入れたのは父で、私から離れる決意をしたのは矢島さん。責める相手が神谷さんでないことは、きっとどこかで分かっていた。
すると、聞こえてきた大きなため息。
「本当に、馬鹿がつくほど真っ直ぐな人ね。」
そんな呆れたような声に反応し、思わずその場で黙り込んでしまった。何か地雷を踏んでしまったのかと、次に出す言葉を必死に考える。
「いつまで立ってる気?座りなさい。」
しかし、なぜか私はソファへと促された。
慌てて足を動かすと、しばらく固まっていた筋肉が少しだけ痺れを訴える。ソファに近づきながら顔色を伺い、申し訳ない程度に浅く腰掛けた。
その時、神谷さんはおもむろにペンを手に取った。私の向かい側に座り、何やら紙にすらすらと書き始める。
置いてきぼりにされた私はそわそわとしながら、ただ黙って座っていることなんてできなくて、思いつくままに口を開いた。