巡り行く季節の中心から【連載中】
しばらくして担任の「入っていいぞォ」という締まりのない声が聞こえ、俺は深呼吸したあと意を決してドアを開いた。
こうして転入生として新しい教室に入ることは幾度となくしてきたことだが、未だに緊張してしまう。

教室に入るなり、まるで動物園のパンダでも見るかのような視線が一斉に突き刺さる。
一部の女子は俺の方を見ながら早速耳打ちで何やら話し始めているし、また向こうにいるツンツン頭の男子と不意に目が合ったかと思えばウインクされた。
つい表情が引きつりそうになる。

兎にも角にも第一印象が大事というのは尤もな意見だ。
俺は担任の横に立ち、極力親しみやすそうなオーラを纏って新たなクラスメイトに挨拶した。


「長谷川はあそこの空いてる席だからなァ」


それから用意されていた席に腰下ろして、とりあえずまずはご近所さんとの親交だと奥様的な思想に則り、隣の席の女子に笑いかけてみる。


「隣の席のよしみでよろしく」
「……あ、うん、よろしく」


そいつは酒に酔った上司のくだらない親父ギャグを、愛想笑いでスルーしようと試みる哀れな部下の如く、微妙な顔をして返事をしてきた。
ご丁寧に沈黙まで置いてくれていたが……どうなんだ、このイマイチな反応は。
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