巡り行く季節の中心から【連載中】
「だけどそれくらいでヘコたれる夏枝様じゃないわよ!要は青園小出身者を探し出せばいい話じゃないの」
「少なくとも加奈のクラスにはいないみたいだけど?」
「おいおい、どうするんだよナツ」
「どうするも何も学年中当たれば誰かはいるはずでしょ。やってやるわよこれくらい!」
「何の話か知らんがその気合を少しでも授業で活かしてほしいもんだなァ、芳賀?」


突然低音ボイスが背後から聞こえたと同時に、ごつんと頭に走る痛み。
顔の筋肉を歪めたあたしが振り向くと、サッカーボールを抱えた宮ちゃんがこちらを見下ろしていた。
逆光のせいでハッキリとした表情は窺えないけど、鬼のような血相をしているわけでもなさそう。


「宮ちゃんったら何すんのよ、痛いわね」
「痛いのは俺の心だろうがよォ。まともに授業受けてくれないと先生泣いちゃう」


ふざけて泣いたフリをする宮ちゃんが哀れに見える。
哀れにしている張本人はどこの誰だか、という突っ込みは無しの方向で。
ついでにゴールポスト付近でプロサッカー選手の真似事をしている金沢が派手に転倒していたのも、見なかったことにしたい。
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