腹黒策士が夢見鳥を籠絡するまでの7日間【番外編② 2021.5.19 UP】
はぁ、と一つため息をつくと、スマホが鳴った。
その着信相手をみて電話にでる。
「もしもし? お父さん?」
電話してきたのは
今、アメリカ出張に出ている父だった。
スマホと言うことは仕事の内容ではないだろうことは推察された。
ただ、プライベートでかかってくる時も、私のスマホでないので首をかしげる。
『あ、あげは、起きてたか?』
「うん。そっちは夜かな。でも、どうして、私のスマホ? いつもプライベートは家の電話じゃん」
『あーいや、ちょっとな。気になって』
父はなんだか歯切れ悪くそう言う。
「へ?」
『……あげはの声を聞きたくなったというか』
なんだか父の声はいつもと違って、鼻声に聞こえた。
海外からだから、回線のせい?
それにしては声色が暗い。
まさか、泣いてるってことはないよね?
「お父さんどうしたの? なんかそっちで辛い事でもあったの?」
『いや、ただ、なんていうか……たとえ、あげはが嫁に行っても、お父さんはずっとあげはのお父さんだからな』
「はぁ?」
私は首をかしげる。
父の言っていることが全く分からない。
しかし、娘に非常に甘い父のことだ。
きっと、私がお嫁に行く夢でも見たのだろう。
父が心配性なこともあって、私は田中さんとのことも両親に話していなかった。
結婚がきちんと決まったら言うつもりだったのだが、今になってみれば言わなくてよかった、と思う。
「大丈夫だよ、お父さん」
私はそう言うと、もう大学に行く準備するから、と電話を切った。