DIYで魔法世界を再建!
私が後ろへ倒れ込むと、たまたまそこにいた男子に抱えられた。でも、もう私の全身には力が宿っておらず、正直息をするだけでも苦しい。それくらい心がショートしていた。
・・・そうだ、分かっていたユキ姉さんは誰よりも優しくて、誰よりもお節介だった。
私が家で宿題に苦戦していれば、必ずと言っていい程助けてくれた。
弟が道端で転んだ時は、姉が背負って家まで運んでくれた。
毎日毎日、父と私達のお弁当を作ってくれるのは、ユキ姉さんだった。どんなに疲れていても、土日だとしても、ユキ姉さんは進んで台所に立ってくれた。

「優しい人ほど早死にする」

私の読んでいた漫画の中で、そんなセリフがある。しかしそれは、決して漫画の世界だけに通ずる事ではなかった。
色々と先生が私に話しかけてくるけど、全然聞こえない。突然両方の鼓膜が破れてしまった感覚だ。いや、鼓膜だけではない、眼球も涙で沈んでしまいそう。
きっと、同じ中学にいる筈の弟も、この事実を今知らされている最中なんだろう。でも、家族の中で一番ダメージが大きいのは、恐らくお父さんだ。
もしかしたら、数日間は寝込んでしまうのかもしれない。ユキ姉さんから聞いた事がある、まだ弟が生まれて間もない頃、白血病で母が亡くなった時、数日間はまともに歩ける状態ではなかったそう。
それでもユキ姉さんが色々と気を遣ってくれたおかげで、お父さんは徐々に正気を取り戻し、仕事に復帰した。
その間、私達3人の面倒を見てくれたのは、親戚だけではなく、お父さんの大工仲間も一緒だったそう。
私はあまりその人達の顔を覚えていないけど、手作りの積み木やらおもちゃを沢山プレゼントしてもらったのは覚えている。
今回の場合、一体どうなってしまうのか、検討もつかない。ただ、ユキ姉さんを責める気にはなれなかった。元々お節介であったのは事実だし、ユキ姉さんの命を奪ったのが天災に立ち向かえる筈もない。
もう完全に、諦めの境地に立つしかない。それしか、私達に残された選択肢はなかった。ただ、どうしても心が拒否反応を起こしてしまう。
その証拠として、私の目からはとめどなく涙が溢れている。ユキ姉さんとの思い出が、まるでスポーツカーがサーキットを走る時の様に、高速で私の脳内を駆け回っていた。
それに脳がついていけず、私は言葉を発する事すらもできない状態。高速で走る新幹線に、普通乗用車が追いつけないのと同じ状況だ。
< 15 / 223 >

この作品をシェア

pagetop