DIYで魔法世界を再建!
第五十三章 いざ 出発
「じゃあ、行ってくるね。」

「気をつけて!!」 「ご飯作って待ってますから!!」 「無理しないでくださいね!!」

身支度を整えるのは、意外とあっさり終わってしまった。シーズさんの知識さえあればどうにかなりそうだし、下手に物を持って行くと、シナノ様が沈んでしまう。
でもそんな心配を他所に、私達3人を乗せたシナノ様は、そのまま空中にフワリと浮遊する。一瞬バランス感覚が崩れそうになったけど、自転車に乗っている時の感覚と似ていた。
シナノ様の体にしっかりつかまりながら、私達はベヒモス大国の跡地へと向かう。ただ、そこに無事辿り着けるかも不安になる。それくらい、空から見た荒地は酷い状況だった。
あちこちで飢獣が、獲物を漁るように目を光らせ、建物の残骸ですら、黒く澱んでいる。林の内側から見る荒野とは違い、空から見るこの世界の景色は、お世辞にも「美しい」とは言えない。
普通、空から見た地上というのは、開放的で壮大な風景の筈。生前も、そういったカメラ映像が番組で特集されていたから。ただ、それが『場所を選んだ風景』である事を、今更知ってしまった。
ちょっと考えれば、そんなの道理が通っていない。能天気な考えを疑えなかった自分が嘆かわしく感じる。地上が荒れてしまえば、空から見る景色も当然荒れる。
戦争地帯を撮影するドローンの動画を見たとしても、美しいとは考えにくい。見た事はないけど、何となく察せる。この荒野を真上から眺める景色を見れば。
空も、地面も、全てが真っ黒。まるで大火事が起こった後の残骸の様にも見えた。この荒地の中には、亡骸になってしまった動物や人間も紛れ込んでいるのかもしれない。
でも、確かめる気にはなれない。この荒野に少しでも足を踏み込むだけでも、荒野の一部と化してしまいそうだから。
それに、荒野の真上の空気は、何故か澱んでいる。私やヌエちゃん、シーズさんも何度か咳き込んで、シーズさんに至っては、咳き込みすぎて喉から出血しそうなくらいの勢い。
咳だけではない、目もピリピリとした痛みを生じる。耳や鼻の穴もガサガサになるし、全身をローブで覆い隠さないと、ベヒモス大国の跡地に到着する前にダウンしてしまいそう。
シナノ様もそんな私達を気遣って、何処かに休憩できる場所がないか、辺りを見回していた。しかし、案の定そんな場所は何処にもない。
私達の住む林以外の土地は、人が滞在する事も、踏み入る事もできない場所。ここは私達が我慢するしかない。
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