DIYで魔法世界を再建!
第五十八章 あと一歩
気がつけば、古龍は血の涙を流しながら、私達を恨めしい表情で見ていた。その目から滲み出ている殺意は増すばかり。完全に私達を殺る気だ。
だが、何故か苦しんでいる様子には見えなかった。むしろ私達に対して抱える憎悪によって暴れている印象だ。
これこそ、痛みに屈しない精神力、いわゆる『根性』なのだろうか?
ただ、その根性をもう少し別の事に利用していれば、こんな事態を招く事はなかったのに。・・・いや、彼女にとって『自分の意思を曲げる=損』という考え方が根付いていたのかもしれない。
女王様も息子であるシーズさんの様に、閉ざされた幼少期を過ごしていたのかもしれない。
その劣悪な環境で育てられt結果、こんな化け物に変わり果てても尚、自分の欲望を貫いているんだから、もう『呪い』としか言えない。
結局、その教育方針や環境が間違っている事すら、彼女は許さないんだろう。私達の理解の及ばない所にいる相手に対して同情するのは、とてつもなく難しい。

「ギィヤァァァァァァァァァ!!!」

魔法陣がだんだんと崩れてきているからだろうか、古龍の鳴き声が、だんだん人間味を帯びてきた。しかもその悲鳴は、女性の甲高い声だ。
声も変わってきているが、その恐ろしい顔も、より一層恐ろしくなっている気がする。幼い頃、日本昔ばなしで見た『山姥』みたいな、しわくちゃで引き攣った顔つき。
昔話というのは、子供が読みやすく改変された物語が浸透しているが、改変されていない原本は、とんでもなく恐ろしく、大人でもドン引きするレベル。
ただ、『三枚のお札』等の昔話で登場する山姥の場合は、絵であっても原文であっても怖い事に変わりはない。その絵本を見た幼い私は、しばらく祖母となかなか会話できなかった程。
その頃のトラウマが、まさかこんな形で再現されてしまうなんて、絵本に出ていた山姥でさえも、いい迷惑だと思っているかもしれない。
でも実際、古龍の鳴き声や外見は、徐々に人間の姿へと変わっている。術がどんどん解け、蓄積された年数や蓄えすぎた魔力が、女王様の外見を歪にしているのか、そもそも元々こんな・・・
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