DIYで魔法世界を再建!
夢中を彷徨うユキナ 1片
・・・此処は・・・何処だろう??
確か・・・ついさっきまで私は、小川で巨大な化け物と戦って・・・

「・・・っていうか・・・此処・・・
 見た事ないけど・・・??」

気がつくと、私は『何処かの国の城下町』にいた。
城下町に居る人は、私の事を認識していないのか、私は試しに巡回中の兵士に触れて見ようとしたけど、まるで自分が幽霊になった様に、スルリと突き抜ける。
時刻は分からない、いつも懐に入れてある筈のブローチも無くなっている。だから現在時刻は確かめられないけど、周りの暗さと、頭上に浮かぶ満月から、今が真夜中である事は察せる。
ただその満月の光には、とにかく弱い。空気が汚いのか、魔力が関係しているのか。まるで寿命が近い豆電球の様に、チカチカとしか光を発さない。
しかもその夜空には、雲一つない。林で見る月の光は、木々に遮られても煌々と光り輝いていた筈。今私の真上に浮かんでいる存在が、本当に『月』なのか、疑いたくなる程。
辺りを見渡すと、そこには石造の家がいくつも立ち並び、どの家もかなりこじんまりとしている、一種の集合住宅だろうか?
でも、壁も床も、妙にヌルヌルしている気がする。
油だろうか? それともそうゆう材質なのだろうか?
どちらにしても、此処は居心地が悪い。空気も重いし、焦げ臭い臭いがじわじわと私の身体中を侵食している気がする。
早くこの場から逃げ出したいけど、家が連なっているせいで、何処が出口なのか分からない。とりあえずあちこち歩いてみようと、私が一歩前へ踏み出すと、足の裏をねっとりとした感覚が襲う。
何なのかと思い、一旦立ち止まって右足の裏側を見ると、テカテカとした液体がべっとりと付着している。ガソリンか何かか?
もう一度辺りを見渡すと、ちゃんと掃除されていないのか、あちこちにゴミが散乱している。あちこちの壁にはシミがこびり付き、いかにも『黒光するアレ』が出てきそうだ。
私はなるべく足元を注意しながら、この空間から抜け出る方法を探す。途中ですれ違う兵士や住民は、皆揃って重苦しい表情をしている。
しかも、すれ違う人全員が、異様な程細身だ。心配になるくらいげっそりしている。ご飯を食べているとか食べていないとか、それ以前の問題にも見えた。
皆口数は少なく、唯一喋っているのは、親に引っ張られている子供くらい。しかし、その子供が口にする言葉というのも1パターンのみ。ただひたすら

「お腹が空いた」

と言うばかり。
そんな子供の悲痛な叫びに、親は全然見向きもしない。兵士には頭を深々と下げるのに、子供に対する態度が雲泥の差だ。
この異様すぎる町の光景は、完全に・・・
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