DIYで魔法世界を再建!
第二章 救いの手
ブォオオオオオォォォオオオ・・・

突如、まるで悲鳴のような強風が、私の耳元を横切る。そして、私はその悲鳴を聞いた途端、嫌な予感が全身を過ぎる。
じっとしていられなかった私は、甲板から船の内部へ逃げ込んだ。その直後、船内のアナウンスが慌ただしく響いた。

「皆様、ただ今南の方角から、強烈な竜巻が発生いたしました。
 海が荒れる為、船が大変揺れる可能性があります。船の外にいる皆さんは、船内へ避難して、
 壁や柱などに捕まり、アナウンスの指示があるまで待機してください。
 繰り返します、ただ今南の方角から・・・」

アナウンスの奥では、船員同士で何かを言い争っている声が若干聞こえる。よほど逼迫した状況なのか、それとも・・・

「・・・あっ、あの子・・・」

甲板で潮風を満喫していた時、後ろのベンチに座っていた男の子を思い返した私は、ドアの上部にある丸い窓から、甲板の様子を伺った。
男の子は恐怖と不安に押しつぶされて、その場から動けない状態だった。周りを見渡したけど、私よりも頼りになりそうな人はいない。おじいさん・お婆さんばかり。
今から助けを求めに船内を走り回るのも危険。私は意を決して、甲板へ続くドアを開ける。
周りで見ていお婆さん達は止めてくれたけど、今以上に船が揺れてしまうと、小さくて軽い男の子なんて、簡単に海へ放り出されてしまう。
父もそうだった、フェリーで何かアクシデントが起きた時には、必ず私達を安心させる為に、ずっと側にいてくれた。
まだ自然の脅威を知らない子供にとって、船の大揺れは地震と等しいくらい恐ろしい。それは私自身がよく理解している。
私はなるべく、揺れがおさまる僅かな瞬間を狙って、歩を進めた。私を見た男の子の顔は、涙でグチャグチャだ。よほど怖かったんだろう。
その姿は、一番下の弟の様だった。でも今の海は、私でも恐ろしく感じる程畝っていた。まるで大蛇が絡み合っている様な、異様な光景。
その光景に、思わず足が竦みそうになったけど、男の子の健気な眼差しを見て、一瞬で我に帰った。私はどうにか、男の子が座っているベンチへ辿り着いた。
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