癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。


それからリド二ーはポツリポツリと何があったのか、何故ここへやって来たのかを話し出した。

自分はリド二ー・ウルムと言う名で、みんなからはリドと呼ばれていると教えてくれた。リドはおじいちゃんと、お母さんの三人暮らしで、仲良く暮らしていたが、数ヶ月前からおじいちゃんが寝たきりの状態になってしまったらしい。リドは町で噂の聖女様ならおじいちゃんが治せるのではないかと一人でここまで一人でやって来たと言うことだった。

「そっか、リドはおじいちゃんのことが大好きなんだね」

「うん。だから聖女様、おじいちゃんを助けて」

 そこまで話すと外に出ていたライデン先生が帰ってきた。ライデンに事のいきさつを話しリドの家へ行きたいと話した。すると何故かライデン先生は困った様な顔で行くことを拒んでいたが、愛来がどうしてもとお願いし、何とか承諾を得るとリドの家へと向かった。

 リドの家は王都から少し離れた丘の上に建てられていた。ここから王都が見下ろせる。

 さっきまでいた王都の城下町があんなに遠くに……良い眺め。

 この距離をリドは一人でやって来たなんて……。

「パパが生きていた頃はここに沢山の家畜がいたんだ。今はおじいちゃんも動けないし……家畜たちはほとんど売っちゃって……。僕がもっと大きかったら、ママを助けたあげられるに……」

 ああ、この子は本当に家族を大切にしている。

 リドのおじいちゃんを助けて元気にしてあげたい。

 リドと繋いでいた手に力を込めた。






「聖女様おじいちゃんは奥の部屋だよ」

 リドは愛来を家の中に招き入れた。家の中に入るとテーブルと椅子と棚しかなく、物がほとんど無い。

「聖女様こっちこっち」

 愛来はリドに手を引かれ奥の部屋までやって来た。リドが扉をノックして中に入ると中からしゃがれた声がした。

「おじいちゃん。聖女様つれてきたよ。これでもう大丈夫だよ」

 愛来はそっと扉の中を覗くとそこにはベッドに横たわる一人の老人がいた。その老人は頬から顎にかけてひげを生やしているが、それでもわかるほど頬がこけ、顔色が悪い。


 この人がリドのおじいちゃんね。


 愛来はゆっくりとベッドの横まで行き、老人の手を取った。老人の手はかさついていて肉があまりなく、骨と皮ばかりだった。

「こんにちは、私は愛来と言います。お名前を伺ってもよろしいですか?」

 老人はコクリと頷くと、しわがれた声で答えてくれた。

「聖女様このような所までありがとうございます。わしはロドス・ウルムで……うっ……ごほっごほっ」

 ロドスは少し話し出しただけで咳き込み、ハーッハーッと肩で呼吸をし始めた。

 苦しそう……。

 ロドスさんのこの症状は一体何?

「ロドスさん体に触りますね」

 お腹のあたりに……何だろう?

 違和感がある。

 腹水……?

 これは……。

 私はこの病気がなんなのか知っている。





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