癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
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最近更に天候がおかしくなっていた。晴れていたかと思うと急に雨が降ったり、雷や雹も頻繁だ。この間は風もないのに竜巻が起こってとても驚いた。それがこの国の気候なのかと思っていたら、こんなことは初めてだとリミルが眉を下げた。
この気候のせいかウィルも忙しそうで、最近やつれたような顔をしている。それに最近お城がガタガタと揺れるのだ。ウィルがイライラしていることがうかがえるのだが、ウィルは何も言わない。「愛来は心配しなくていい」と言うだけ。疎外感を感じる。なんでだろう?みんなの見る目が……わからない。
またガタガタとお城が揺れている。
ウィルはまだ仕事をしているのかしら?
愛来は窓の外に浮かぶ四つの月を眺めた。
大きい。
前にウィルと見た時より月が大きくなっている。
四つの月が出ていることから時刻は二十二時を過ぎているのだろう。
また城がガタガタと揺れだす。
こんなにお城が揺れるなんておかしい。
ウィルの心が乱れている。
愛来は部屋を抜け出すとウィルの元へと向かって城の廊下を進んだ。夜の廊下はシンと静まり返っていて、とても不気味だ。自分の歩く音しか聞こえない。
ウィルの部屋まで来ると護衛騎士が二人廊下に立っている。私に気づいた護衛騎士がギョッと驚いた顔をしている。
「愛来様……今入室は難しいかと……」
「少しだけでいいの顔を見たら戻るから」
困った顔をする護衛騎士。
「ごめんなさい騎士さん達どうしてもウィルに会いたいの。ダメならちょこっと覗くだけでいいから」
止める騎士の言葉を聞かずに愛来は扉を少しだけ開け部屋の中をのぞいたその時。
「くそっっ!!」苛立つ声とともにガタガタと部屋が揺れだした。ウィルは眉間にしわを寄せ頭をガシガシと掻きむしっている。
いったい何があったのか。
ウィルは椅子を乱暴に引くとどかりと座り頭を抱えている。その姿は怒っているというよりは、泣いているかのよう。いったい何が起こっているのか。
「……愛来」