癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
四つの月と異常気象

 *

「今なんと申した?!」

 謁見の間にガルド王の大きな声が響き渡った。国のトップである国王の大声に魔法協会の会長であるトレント・リビナーは眉一つ動かさずに王と向き合っている。

「ですから……」




 トレントの話を聞き終わり、ひじ掛けにもたれる様な格好でトレントに話しかけるガルド。

「トレントよ。これからどうすれば良い?何とかならんのか?」

「先ほども申し上げましたが。方法は一つしかございません」

「……」

 黙り込む国王にトレントは追い打ちをかける。

「この国だけではありません。ファーディア・セレスティーの危機なのです。お早いご決断を」






「急ぎ王太子をここに呼べ。愛来殿には気づかれるな」




 *




「……」



「ウィル大丈夫か?」

 そう問うた王の言葉は父親のそれだった。自分の子供を心配する父。

「ガルド王……いや、父様時間をいただけませんか?他の方法を……必ず見つけ出します。ですから……」

「しかしウィル時間がないのだ。ファーディア・セレスティーを守るためには仕方ない。このままでは……愛来殿を奪おうと近隣諸国も動き出している。このままでは戦争も起こりかねない」

「それは……いつですか?」

「魔法協会のトレントは一カ月以内には執り行うと……」


 ウィルの周りの大気が怒りでガタガタと震えだす。

「落ち着けウィルよ。まだ時間はある。何か方法を考えよう。わしも他国から情報を集める。お前もできることをしろ」

 ウィルは心を落ち着かせるため何度か深呼吸をすると、ガルドに頭を下げた。

「ありがとうございます。一カ月以内に他の方法を見つけ出して見せます」

 ウィルは足早に謁見間を後にするとその足で魔法協会へと向かった。

 なぜだ。

 どうしてこんなことになるんだ。

 婚約式はもうすぐだと言うのに……。

 俺は宗次郎と約束したんだ。

 もし……もしも愛来がこの世界に来ることがあったら必ず守り抜くと……。ウィルは胸のポケットから宗次郎の形見である一枚の写真を取り出した。それにはおかっぱ頭の少女が母親と笑っていた。

 愛来……必ず方法はある。


 見つけてみせる。


 皆が幸せになる方法を!!




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