癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
悪役令嬢はツンデレ?


 *


 あれから愛来は衰えてしまって筋肉を強化するべく、毎日体力づくりに勤しんでいるのが……何故かいつも邪魔が入る。

 早く体力を戻さないと何処に行くにもウィルにお姫様抱っこをしてもらわなければならなくなってしまう。城の者たちは仲睦まじい二人を嬉しそうに見つめているだけなのだが、これが恥ずかしすぎるのだ。

 だから早く体力を元に戻したいのだが、お姫様抱っこで愛来を自分が運びたいウィルは今日は今日とて邪魔をするのだった。

 しかし今日は違う邪魔が入った。


 ウィルに中庭まで連れて来てもらった愛来はここでウィルとは離れ、体操を始めようとしたその時、一人の令嬢が近づいて来た。

 悪役令嬢張りに「おーほほほほ」と高笑いをする令嬢にドン引きしつつも、愛来とさほど変わらない身長差に親近感がわいてしまう。

 確かこの世界の平均身長は168センチ、目の前で高笑いを続ける令嬢は愛来より少し高めの158センチ位だろう。身長差はあまりないが体系では愛来が完全に負けていた。リビエラが今着ているドレスは濃い紫のドレスで、デコルテの空いたデザインだ。コルセットにより強調された胸、キュッと締まった腰、ほっそりと華奢な体躯、まさにボンッキュッボンである。容姿は燃えるように赤い赤毛に金色の瞳、強い意志を感じるその瞳は人を引きつける力があると思われた。

「あなたは愛来様でいらっしゃいますわね?」

「あっ……はい。井上愛来と申します」

 頭を下げる愛来に向かって令嬢が声を張り上げる。

 わーー凄いな。

 高笑いが上手だなぁ。

 よくわからないけど憎めない感じがする。

「わたくしの名前はリビエラ・ドル・リストナと申します。リストナ公爵家の娘ですわ、愛来様とはずっとお話がしたいと思っていたのですわ」

 おぉーーほほほほと言葉の最後に必ず高笑いがついてくる。これ、かなり体力が必要だと思う。体のそらし方もイナバウアーを彷彿とさせる。

「わたくしはウィル王太子殿下の元婚約者、初めまして泥棒猫さん」

 元……婚約者?

 泥棒猫?

 驚きで声の出せない愛来はリビエラを見つめることしかできなかった。

「あなた知らなかったの?」

「ふん!!」と鼻を鳴らしたリビエラの表情は口元は笑っているが、瞳は怒りに燃え、敵意を含んでいた。



< 65 / 72 >

この作品をシェア

pagetop