癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。

「あなたは、わたくしからウィル様を奪ったのですわ許さなくてよ」


 怒りの収まらないリビエラと愛来の頭上にふわふわとギルが飛んできた。相変わらず気まぐれなギルは突然愛来の元へとやっくる。


「ギルちゃん、どうしたの?おなかが減ったの?」

「キュイッ」と鳴いたギルはどうやらお腹が減っているらしい。しかし、今は結構な修羅場である。少しは空気を読んでもらいたい。

 しかしこの張り詰めた空気を解いたのは、敵意を露わにしていたリビエラだった。

「なっ、なんなんですのそれは……」

 あーー、やっぱりギガル・ドラコは怖いよね。見た目可愛いけど魔獣だし。ところがリビエラの反応は愛来の予想とは真逆のものだった。

「かっ……可愛すぎる。このモフモフ名前はあるんですの?」

「ギルです。私はギルちゃんと呼んでいます。リビエラ様はモフモフが好きなんですか?」

「すっ、好きではないわ」

 そう言って目線を逸らしたリビエラだったが、チラチラとギルを目で追っている。あれはモフモフが大好きに違いない。愛来はリビエラ様の手を取るとシュリーを手渡した。

「これを一粒ギルに食べさせてください」

「これをですの?」

 リビエラがシュリーを一粒つまむと、ギルは嬉しそうにリビエラの腕の中へと収まった。リビエラはギルのモフモフを堪能しつつ、シュリーを食べさせる。ギルは嬉しそうに「キュイッ」と鳴くとリビエラにすり寄った。リビエラも嬉しそうにギルに頬ずりしている。

 リビエラ様……やっぱり憎めないな。すっごく素直だし、可愛い。

 リビエラとギルがじゃれ合っていると、いつの間にか後ろからウィルがやって来ていた。ウィルはリビエラの前に立つとそっと頭を撫でた。

「リビエラ元気だったか?」

 リビエラは頬を染めて俯くとコクンッと頷いた。さっきまでの高笑いが嘘のように恥じらうリビエラの姿に、思わず愛来も微笑んでしまうが、リビエラに微笑むウィルを見ていると胸がチクンと痛んだ。

「リビエラ、王と王妃がお呼びだ、一緒に行こう。愛来もだ」

 ウィルはそういうと私の膝の後ろと背に手を入れ軽々とお姫様抱っこした。それを見ていたリビエラがプクッと頬を膨らませている。

 うわ、怒ってる怒ってる。

 ホント分かりやすいなリビエラ様はクスクスと愛来が笑っていると、リビエラはプイッと顔を横に向けてしまった。




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