やわらかな檻
 始まりはまだこの子が私よりずっとずっと小さかった頃、滅多に外に出られない弟のために何かしたいって言い出したこと。

 そんなの父親か母親に言えば良いだろうに、反対されるのを恐れてか、それとも自由に動ける『外』の人間だからか私に頼んできた。


 小夜さんに言った理由は嘘じゃない。


 ただ二人で考えたのが『紫苑の花売りで売られている花束を贈る』ことで、匠は私が何の花を贈っているのか知らなかった。

 弟との接触も表向きには禁じられていたから、慧の反応も私を経由して聞くだけ。

 それ以上何も聞いてこなかったし、私もすっかり花の種類を言うのを忘れてた。

 そこは謝らなきゃいけないかもね。


「そういや、今日車で来ていたの?」


 匠は小さく笑って頷いた。何よ、ガラッと話題を変えたのがそんなにおかしい?
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