やわらかな檻
「庭門を利用したんだよ。あそこは直接庭園と駐車場が繋がっているからね、中々使い勝手が良い」
「そうだと思った」
庭園の中にある温室から校門に出て、そこから駐車場に回ると遠回りになる。だから、庭園から直接駐車場に行ける門を使った。
これが一本道を歩いていたのに、私たちが匠とすれ違わなかったカラクリの理由だった。
……まあ、これは紫苑生であればノーヒントでもそのうち気付くわね。
湯飲みに入った緑茶で唇を軽く濡らし、小ぢんまりとしたちゃぶ台に置く。
湯飲みも茶葉の値段も聞きたかないけど、この生活感に溢れた部屋だけはそれなりに居心地が良いわ。
陽子の部屋だったからかしら、全てのものがしっくり手に馴染むような気がする。
一通り部屋を眺めてから視線を戻すと、匠は新月の間の方を見ていた。小夜さんはまだ出てこない。
「小夜さんは真相に気付くと思う?」