やわらかな檻
「気付くに一万」

「残念、私も『気付く』だから賭けにならないわ。小夜さん結構カンが鋭いみたいだし、慧がヒントをわざわざ捨てるはずないじゃない」


 これは匠が持ってきた花束と比べて分かったのだけれど、取り置きの花束だけ目立つようにか違う色の包装紙を使われていたのよね。

 茎を縛るゴムの色も違ったんだし、偶然じゃあないと思うの。

 だから花を生けた後、慧が包装紙を片付けていなければまだアレらは残っているはずで。


「だろうね」

 漆黒の瞳には興味深いものを見つめるような輝きが宿っている。

 そういえば小さな頃から他人の行動に楽しみを見出すところがあったな、この子。

 チェスをやっている人たちの隣にいてニヤニヤ観戦してる性格悪いタイプだった。


「来年はどうする? 一応私、日本に戻ってる予定だけど?」
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