やわらかな檻
「……かもね」


 はらはらと散っていく桜。
 時折、風に吹かれて惜しげもなく花びらを落とし幻想的な光景を作り出す。


 下級生達も、この時期ばかりは遠慮して掃除をするのを止めていた。桜の絨毯を掃くのが勿体ないとばかりに。


「いつか紹介してよ?」

「もちろん、いつかは」

「小夜の返事は『いつか』ばかりだわ」


 その通り、私は彼を紹介する気は更々なかった。彼に友人とコンタクトを取らせるなんて論外。

 もう一度、窓の外に視線を移す。
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