やわらかな檻
 手早く掃除を済ませていると、後ろから肩を叩かれた。

 作業を止め、体ごとゆっくりと振り向く。

 同級の男子だった。

 名前は六条遼。
 大きな会社の跡取りなのだ、と女子が騒いでいたような気もしなくはない。私には関係ないが。


「小夜さん、後ろほどけてるよ」
「え?」


 片手を頭の後ろに持っていき、感触を確かめる。
 今日は二本の白く細い紐で髪を一つに結んでいた。
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