やわらかな檻
 慧は、変わらず美しい。

 夜であろうが昼であろうが変わりなく、神に偏愛された寵児のように。

 さらさらの、肘まで伸ばされた黒髪。

 しっとりと濡れた唇は鮮やかな紅。

 並みの女性よりも強い輝きを放ち、老若男女誰もが目を奪われる。


「桜。……ねぇ、慧」


 ほー、と小さく声を零しながら桜を見上げていた慧は、私の声に気付くと、


「何でしょうか?」


と言いながらゆっくりと隣にしゃがみ込んだ。
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