やわらかな檻


 容赦しませんよ。


 彼は、そう言って微笑む。

 ただ純粋に、艶やかに、それでいてお気に入りの玩具を取られまいと必死になる子供のように。

 容赦してくれないことは分かりきっていた。

 慧が誰よりも大切にしている人形を、慧は自身の手で玩具箱の中に閉じ込めてしまったのだから。


 その他大勢の人間など、もっと容赦しないに決まっている。

 そっと手を伸ばして、触れるか触れないか程度に彼の頬を撫でた。


 私は何も知らない無邪気な子供のようににこりと笑ってみせて、甘えるような仕草で彼の腕をとる。
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