やわらかな檻
 思考の海に沈んでいたのが分かったのだろうか。

 彼は少し顔を離して、私の目の前でひらりと手を振る。


「聞いていますか?」
「聞いてる、ありがとう」


 質問に答えてくれたのなら、まずは礼だ。
 答えは後回し。


「そうですか。
……覚悟しておいて下さいね? もし、そんな時が来たのなら」
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