やわらかな檻
 彼は抹茶色のソファに座っていた。


 殺風景な部屋で、それだけが異質なひかりを放っているようだった。

 一人用の小さな文机と、ソファと、布団。あとは延々と、畳が続くだけ。

 この広い和室にはそれしかない。慧が私から、自分と僅かな娯楽以外を全て、奪ったからだ。

 慧は、仕方なさそうに息を吐いて、


「逃がして差し上げたら如何です?」


と言った。
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