やわらかな檻



「ところで、さやの婚約者は?」


 一番聞かれたくなかったことを言い当てられた私は、びくりと体を奮わせる。

 出かける前、随分と釘をさされていた。


『男と話すのは必要最低限にして下さいね?』だの。
『破ったらお仕置きですから』だの。


 どこで誰に聞かれているか分からなかった。

 彼が私の知らない場所で用意した衣服に小型の盗聴器が埋め込まれている可能性も、ない訳ではない。


「今日は来ないの」
「来れない、じゃなくて?」
< 41 / 143 >

この作品をシェア

pagetop