やわらかな檻



「馨に彼の、何が分かるというの。……だから私は」


 馨はその時の小夜の表情を思い返していた。


 打ちひしがれ、雨に打たれた猫のよう。
 気高く、染められることを拒絶する白薔薇のよう。


 彼女は今にも泣きそうに顔を歪め、微かに肩が震えていたのだ。

 パーティーが終わり数日経った今でも、彼女との会話は一言一句漏らさず言うことが出来る。


 それくらいに彼女との再会は、馨にとって衝撃が強いものだった。
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