やわらかな檻
 そして、次男。
 名を慧と言う。


 仁科家の跡取り問題から、常に女として振舞わなければならない子供だった。

 この子は――言い表すのがとても難しく、複雑だ。簡潔に説明は出来ない。

 私はなぜか、息子二人の相手をするのが仕事のようなものだった。

 保母というには相応しくなく、また母でもない微妙な立場。


 何度相手をしても、慧は私に何の感情も抱かない。

 考えてみれば変ではないだろうか。

 普通、母親から父親を取った恨みだの憎しみだのあるいは同情だの、興味だの持っても良いはずなのに。
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