やわらかな檻
 彼女と会うのは久方振りだった。

 確か、神崎との結婚式で会ったのが最後だったか。

 とにかく、二年以上は音信不通も良いところ。

 それがどうして唐突に子連れで私の家へ、仁科の離れへやって来たのかは是非とも聞きたいが、それは問題ではない。


 私の目は慧に釘付けだった。
 正しくはぎこちない様子で幼子と触れ合っている、慧が。


 笑っている。


 私の前では無表情無関心無反応を崩そうとしない、あの慧が。

 慧の指を握る幼子に、微笑み返していた。
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