やわらかな檻
 その日から、私は息子達に線を引くのを止めた。

 本妻に遠慮などせず、びしばしと笑顔の指導、ついでに勉強を見てやったり一緒にチェスをしたりして遊んでいた。

 ……まあ、勉強は二人とも十分出来るものではあったが。

 つまりは感受性というものが足りなかったのだ、特に次男には。


 慧は次第に、ほんっっとうにゆっくりと私に懐いてくれた。その期間、約一年。


 季節が巡り、もう一度春になる頃には慧は私に意見やら批判やら、まぁ何らかの感情を見せてくれるようになっていた。

 しかし、あの笑みだけは。


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