やわらかな檻
 おりしも時期は六月の終わり、短冊に何かが書いてあれば誰もが願い事と判断するだろう。

 慧は私が何を『解消』したいのか分かっている。

 だから無意味と言い切るのだ。

 ……ここにある短冊に書かれた全ての願い事は、慧の了承無しには成立しない。

 それでも、言わずにはいられなかった。


「無意味なら願ってはいけないなんておかしいじゃない。――もしかして、全部見たの?」


 一歩部屋に足を踏み入れれば、左足首に付けられた銀の足飾りがしゃなりと揺れた。

 普段は気にしていないのに、こういう時は自分が軟禁されていると自覚してしまうから癪に障る。

 畳を彩る短冊達は、もちろん私がそうしたのではない。

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