幼恋。




「なにしてるの?ダメだよ!」






椛の驚きの行動に、思わずタバコを取り上げるとチッと舌打ちが聞こえてきた。






「返せよ」



「ダメだよ!まだ未成年だよ?」



「返せって」



「ダメだって!」






椛にタバコなんて吸って欲しくない。
どうにか辞めさせたい一心で私も引かずにいると




カラン




と、乾いた音が聞こえて転がっていた空き缶が勢いよく壁に飛んでいった。






「椛…」



「おりは、返せ」



「嫌だ」






椛の体が悪くなるものをあげたくない。
法律もそうだけど、そもそも私は椛に長生きして欲しいから。

そんな気持ちで見つめると椛はため息をついた。






「今更止めたって無駄だっの。
本当はお前も俺のためとかじゃなくて世間体だろ」






違う、違うよ。

そう声を出して否定したくても上手く言えずに必死に首を振る。



椛が早くからタバコなんて吸って体壊して欲しくない。

ただそれだけなんだよ。






「お前バカだよなぁ。
普通俺なんか見捨てるだろ」



「……」






だってそれは椛のこと放っておけないんだもん。



例えみんなが見放しても、私は絶対椛を見放したりなんてしない。




幼稚園の頃、叶ちゃんばかり可愛がる母親の花さんを見て椛が悲しい顔からひねくれていくのを傍で見ていたから。




小さいながらに私は椛を救いたいって気持ちが芽生えたんだもの。






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