離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
下ごしらえ、しとかなければよかったな……。
あらかじめ玉ねぎはみじん切りにして炒めておいたし、細かくちぎった食パンは牛乳につけておいた。
先にやっておかなければ、そこから始めてもっと時間がかかったはずだ。
買ってきてもらった合挽き肉をガラス製のボウルに入れると、横から達樹さんが玉ねぎとパンを投入してくれる。
更に卵を割り入れ、調味料も入れてくれた。
全てを入れたボウルの中身を混ぜてこねていく。
たねができると、ふたつに分けて少し少ないほうを達樹さんにお願いする。
「私のほうのハンバーグは、達樹さんが成形してください」
「ああ、わかった」
ハンバーグなら作れると言っていた達樹さんは成形するのが上手く、形を作ると手の平に叩きつけて空気も抜いていく。
横で同じように達樹さんの少し大きいハンバーグの形を整えながら、不意に鼻の奥がツンと痛くなり、手の中にあるハンバーグが揺れて見えた。
涙がこぼれないように、ハンバーグを熱したフライパンに載せていく。
「食べたく、ない……」
フライパンの中で跳ねる油を見つめ、ポツリと呟くように口にする。
私の横顔に、達樹さんの視線がささった。