離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「ちょっ、達樹さん、何を!?」


 スーツの姿は細身で、筋肉質のがっちりしている感じには見えないのに、私を軽々と持ち上げてしまう達樹さん。

 私の体重なんて、間違いなく軽いほうではない。それなのに、だ。


「あの、重いから下ろしてっ」

「ああ、すぐに下ろす」


 私の訴えも軽く受け流し、達樹さんが要望通り私を下ろしたのは広いキングサイズのベッドの上。

 横にさせられた途端、下から突き上げるように鼓動が音を上げる。

 ベッドに膝をのせて私を見下ろす達樹さんの片手が、きっちりと締められた黒いネクタイの結び目を掴んだ。


「あ、あの、ちょっと待ってください! なんですかこの状況は」

「何って、夫婦の初夜だろ」


 しょ……初夜!?


 驚くべき回答が返ってきて、慌てて肘を立てて上体をベッドから起こす。

 婚姻届を提出後、用意された新居のマンションで新婚生活を送ることは一日ですらなかった。

 すぐに達樹さんはカナダへ行く準備に追われ、そのまま空の向こうに旅立ってしまったからだ。


「しょ、初夜なんて」


〝初夜〟と、その言葉を口にするだけでも羞恥に襲われて声が小さくなる。

 それでも恥ずかしいだとか言っている場合でもない状況で、気持ちを奮い立たせた。

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