狂おしいほどに君を愛している

13.護衛

「変わった味のお茶ね」

新し専属の侍女になったのは茶色の髪と目をした不愛想な女性だ。

本館から来た侍女だ。名前はエリーシャ。

「東方の国から取り寄せたお茶です。体に良いものなので毎日欠かさずに飲んでください。スカーレットお嬢様は、その、栄養が足りてませんから」

気まずそうにエリーシャが視線を逸らす。

まぁ、そうでしょうね。

食堂に行けないことも多かったし、食堂に行かないと食事なんてないもの。

私はこの変わった味のお茶をあまり好きにはなれなかったけど栄養失調気味であることに変わりはないので我慢して飲むことにした。



◇◇◇



「護衛?」

「ああ。公爵令嬢なら外出の際は必ず護衛をつけている」

そう言えば、部屋の外にいる時のリーズナはいつも必ず護衛と一緒だった。

「邸の中では目を瞑れますが、城下に行く際に護衛もつけないのははしたないことですからね」

父の執務室に呼ばれたと思ったらそんなことを言われた。

客人用のソファーでお茶を飲みながら義母が父の足りない説明を付け加える。けれど私がうがった見方をしているだけなのか、彼女の言葉はまるで妾腹である私を揶揄しているようだった。

「どうして急に、今までは護衛をつけなくても問題なかったのではないのですか?」

「急ではない。以前から話は出ていた」

「けれどあなたのお母様が了承しなかったの。貴族の世界は本舗な彼女にはいろいろ窮屈だったのでしょうね。それがあのような結果を招くことになるとは思いもしなかったわ。あなたも同じ結果を招きたくはないでしょう」

立場的に彼女が私を嫌うのは仕方のないことだろう。

「公爵家の性を名乗る以上は母親に似て奔放になられて、我が家に泥を塗られても困りますからね」

「‥‥‥分かりました」

こうして私に二人の護衛がついた。

「何だか、疲れたわ」

部屋に戻ってベッドに横になる。

目を閉じてもまだ昼間なので眠くはないが動くのも億劫だった。

色々なことが重なり過ぎて疲れが溜まっているのだろう。

母親や侍女たちの虐待に怯える必要はなくなったのだからもう少し楽になっても良い気がするけど、この邸が私にとって寛げる場所でない以上は無理な話なのかもしれない。

それに問題は何も解決していない。

リーズナのことも、彼女の乳母のことも。

もう二度とあんな末路は御免だ。

私が愛した人はみんなリーズナを選んだ。

「ダメね、疲れている時は暗い方にばかり考えてしまうわ。明日、気分転嫁に城下でも散策してみようかしら」

四回の人生で城下には何度か行ったことがある。今世ではまだなかった。

母が私の自由を許してくれるはずもなく、私自身も箱庭に閉じ込められたまま外に広がる世界に目を向ける余裕すらなかった。
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