狂おしいほどに君を愛している

23.高まる思い

邸から戻った私の頭にはノエルがいた。

彼の姿が頭から離れない。どうしてだろう。

「一目惚れ?」

なんか違う気がする。

初対面のはずなんだけど、とても懐かしい感じがする。

あんなに綺麗な顔の人、そうそう忘れないと思うんだけど。まぁ、今までの繰り返しの人生は色々と波乱万丈だったし、覚えていて楽しいものなんてないから印象に残らなくても仕方がないかもしれないけどここまで綺麗さっぱり忘れるなんてあり得ない。

「明日、また会えるのよね」

貴族は十六歳になったら貴族の学校に通わなければならない。

私は学生生活は今回で五回目になる。

四回目までの学校生活は決して楽しいものではなかった。友達と呼べる人たちもいなかった。

ぼっちではなかったけど、公爵家の人間である私に媚を売っていただけ。だから私がいないところでは妾腹だと馬鹿にしていた。

そんな記憶があるから正直、明日から始まる学校生活のことを思うと憂鬱だった。だけど彼がいるんだと考えるとそれも悪くない気がする。

どうしてこんなに気になるのだろう。

彼のことを考えるだけで胸が熱くなる。



「早く、会いたいな」



◇◇◇



ノエル視点



「嬉しそうだな」

上機嫌で帰ってきた俺をレイクロードが薄気味悪いものでも見たような顔で言う。

「当たり前でしょう。やっとスカーレットに会えたんだよ」

俺のスカーレット。

ずっとこの日を待っていた。どれだけ待ちわびたことか。

「この手でスカーレットに触れたんだよ。彼女と言葉を交わせたんだ」

俺の唯一。俺の全て。俺の愛しい人

「お前が彼女の母親を処理したり、暴漢を処理したりしなければもう少し早く会えただろうな。完全回復もしていないのに無茶ばかり」

お小言を言うレイクロードに俺は呆れる。彼は何を言っているんだ。

「レイ、俺がスカーレットを傷つける者を許せるはずがないでしょう」

「そうかい」

「それにしてもスカーレット、可愛かったな。あ、そうだレイ、宝石商を呼んでよ」

「宝石商?」

「彼女に俺の色と同じ宝石のアクセサリーをプレゼントするんだ。何が良いかな?」

「待て待て待て待て。スカーレット嬢に会えて嬉しいのは分かるけど、少しは落ち着け。まず、こんな夜中に宝石商を家に呼ぶことはできない。今日の営業は終了だからな。それに、初対面の男からそんな重たいプレゼントされて喜ぶ令嬢はいない」

「アレキサンドライトなんて良いんじゃないかな。普段は緑だけど光に当てると赤くなるし。俺の髪は赤だし、目は緑で、まるっきり俺の色じゃん!うん、アレキサンドライトにしよう」

「ねぇ、俺の話を聞いてます?聞いていた方が良いと思うんだけどなぁ。ノエルさん、絶対に後悔すると思うよ。無理だからね、こんな時間に宝石商を呼ぶなんて。あと盛り上がっているところ悪いけど、彼女絶対に受け取らないと思うよ」

「石は決まった。後は何にするかだよね。ペンダント?ピアス?ブレスレット?チョーカーとかもありだよね」

「ねぇ、ノエル。マジなの?マジで言ってるの?やめた方が良いよ」

「形かもどうしようか?‥…自作にしよう!世界に一つだけのペンダントにしよう!」

既製品だとどうしても誰かと被っちゃうからね。

たとえ同性でも彼女とお揃いの物を持っているなんて許せない。

「いやいやいやいや、落ち着け。浮かれるのは分かるけど、少しは落ち着こう。重たいプレゼントを更に重たくしてどうすんの?」

「ペンダントにするんだよ。そんな重たいもの渡すわけないでしょう。彼女の負担にならない普通の重さのペンダントにするに決まってるでしょう。レイ、馬鹿なの?」

「重量の話をしてるんじゃねぇよ」

レイクロードはいったい何を怒っているんだ?

俺と同じ色のプレゼントをするのは当たり前のことだ。

だって学校に行けば彼女は多くの者の視界に映ることになる。下劣で、低俗で醜い奴らの視界に彼女が映るなんて考えるだけで腸が煮えくり返る。

彼女を視界に映した奴らの目を全て潰してしまいたい。今日だってそんな衝動にを抑えるのが大変だったんだ。

目に見えて自分のものだって証を贈って少しは安心したいと思って何が悪い。



「ああ、早くスカーレットに会いたいな」
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